離婚の慰謝料や、子供のための養育費を支払ってもらえない場合、相手方の給与差し押さえすることはできるのでしょうか。今回は、相手が慰謝料や養育費の支払いに応じない場合の対処として、財産の差し押さえが可能かどうかを紹介します。
慰謝料や養育費が支払われない場合、給与の差し押さえは可能?
離婚の際の慰謝料や養育費が相手から支払われない場合には、強制執行により相手の給与を差し押さえることが可能です。強制執行とは、支払い義務を果たさない者の財産を、裁判所が法律に基づいて強制的に差し押さえ、受け取る側の権利を守ってくれる国家手段のことです。
慰謝料や養育費を支払わない相手の給与差し押さえをする方法
慰謝料や養育費を支払わない相手の給与を差し押さえるために、強制執行の申し立てをします。強制執行の手続きのためには、自分に慰謝料や養育費を受け取る権利があることと相手側に支払い義務があることを証明する必要があります。
次のいずれかの書面を準備し、自分の権利と相手の義務を証明しましょう。
- 公正証書として作成した離婚協議書
- 裁判の調停調書
いずれの書面もない場合は、強制執行を申し立てるために裁判を行う必要がでてきます。
給与差し押さえの注意点①強制執行の申し立てには相手の情報が必要
裁判所に強制執行を申し立てる場合には、元配偶者の次の情報が必要になります。
- 現住所
- 勤務先
- 金融機関名・支店名
いずれの情報も間違っていると差し押さえができないので、事前に確認しておきましょう。相手の現住所がわからない場合は、戸籍謄本を取り寄せることで確認が可能です。勤務先がわからない場合は、探偵に依頼するなどの方法を取りましょう。
金融機関名・支店名さえわかれば、口座番号は不明でもよいのですが、それさえわからない場合には、弁護士に財産調査を依頼する必要があるでしょう。
給与差し押さえの注意点②公正証書に強制執行の許諾を明記する必要がある
離婚協議書や裁判の調停調書には、次の2点が明確に記載されている必要があります。
- 慰謝料・養育費の金額
- 強制執行に対する許諾文
公正証書や裁判の調停調書には、誰が誰にいくら支払うのかという情報と、「もしも支払いを行わなかった場合は、強制執行してもいいですよ」相手側の許諾を示す内容が記載されていることが必要になります。
給与差し押さえの注意点③給与の4分の1の額までしか差し押さえできない
強制執行によって差し押さえが可能なのは、相手の手取り給与の4分の1までの額が上限です。(相手の給与が月額44万円より少ないの場合)高額な慰謝料をまったく支払わない相手に対して強制執行した場合には、慰謝料の回収に年数がかかる場合もあります。
ちなみに、養育費の場合は相手の手取り給与の2分の1までの額を上限に差し押さえが可能です。(相手の手取り給与が66万円より少ない場合)
給与以外にも差し押さえ可能な財産があるか確認する
強制執行により差し押さえが可能な財産は、給与だけではありません。例えば、次のような財産も、差し押さえすることができます。
- 家や土地
- 車
- 貴金属
- 預貯金
- 株などの有価証券
- 生命保険の解約返戻金
相手方にどのような財産がどのくらいあるのか、強制執行の申し立てをする前に調査しておくと、慰謝料や養育費の回収がスムーズに進むでしょう。
慰謝料や養育費を支払わない場合の強制執行は最終手段
慰謝料や養育費を支払わない相手に対して、給与やその他財産を差し押さえる強制執行をかけることは可能です。とはいえ、強制執行はあくまで最終手段としてとらえましょう。
相手側が慰謝料や養育費を支払わない場合は、まずは相手に支払い交渉をしてみましょう。素直に話し合いに応じてくれない場合には、弁護士に依頼して支払いを請求してもらうこともできます。
相手側にとっても、強制執行により給与を差し押さえられると勤務先からの信用を失うリスクがあるので、通常であれば弁護士からの請求で支払いに応じてくれるはずです。それでも支払いに応じない場合など、どうしても強制執行が必要と判断した場合のみ、強制執行の申し立てを行うことをおすすめします。
最後に
今回は、慰謝料や養育費を支払わない相手の財産を差し押さえる強制執行についてまとめてご紹介してきました。慰謝料を支払わない相手の場合、給与の4分の1を、養育費を支払わない場合は給与の2分の1を上限に差し押さえが可能です。ただし、強制執行の手続きには時間もかかりますし、双方が話し合いで解決するのが最も理想的でしょう。弁護士に依頼するのもおすすめですが、弁護士費用の面が心配ですよね。
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