慰謝料を払わない人に対しては、強制執行の手続きを取ることができます。慰謝料を払うと約束をしたのに払ってもらえなかった、分割で毎月払うと決まったのに、途中から支払いが滞っている…という話はよく耳にしますよね。今回は、慰謝料を払わない人に対して行う強制執行の手続きについて、強制執行とは何か、強制執行のやり方や費用についてご紹介します。強制執行したいけど、どのような手続きをすればいいのかわからないという方は、ぜひ参考になさってください。
慰謝料の強制執行とは?
慰謝料の強制執行とは、慰謝料の支払いを約束していたにも関わらず慰謝料を払わない相手に対して、慰謝料支払人の給与や預金口座を差し押さえて強制的に慰謝料を支払わせる手続きのことをいいます。
支払人が自己破産をしても強制執行できる?
自己破産とは、借金などで経済的に立ち行かなくなってしまった人が裁判所に申立を行い、財産を清算する手続きのことをいいます。裁判所で自己破産が認められると、これまでの借金をゼロにすることができます。つまり、今まで借り入れをしていたお金を返済する義務がなくなるということです。
基本的には慰謝料も免責されてしまう可能性が高いのですが、浮気や不倫による慰謝料は非免責債権が認められることが多いため、非免責債権が認められた場合は、自己破産をした相手に対しても慰謝料の強制執行が可能です。ただし、債権者の1人として破産裁判所に対して手続きを行う必要があるので、自分ひとりで手続きを進めるのは困難だといえるでしょう。
強制執行の手続きの方法
強制執行を行う手続きとしては、次の方法があります。
- ✓ 事前に強制執行認諾約款付公正証書を作成しておく
- ✓ 慰謝料の支払人の管轄の裁判所に訴訟の申立を行う
強制執行認諾約款付公正証書を作成してある場合
公正証書は、慰謝料を支払う側と慰謝料の支払いを受ける側の両方が公証役場に出向き作成する必要があるため、公正証書の作成には双方の同意が必要です。つまり、強制執行認諾約款付公正証書を事前に作成してある場合は、訴訟を行わずに強制執行の手続きを行うことができます。
強制執行の申立を行う場合
慰謝料支払いに関する示談書はあっても公正証書による作成をしていなかった場合には、相手方の住所を管轄している裁判所に強制執行の申立を行います。ただし裁判所に申立を行う場合は、相手方の勤務先、銀行口座、住所、財産(支払能力があるか)などを把握しておく必要があります。
強制執行の手続きに必要な費用
強制執行の手続きに必要な費用についてご紹介します。先にご説明した通り、強制執行認諾約款付公正証書を作成している場合は裁判所への申立は不要です。まずは、強制執行認諾約款付公正証書作成に必要な費用からみていきましょう。
強制執行認諾約款付公正証書作成に必要な費用
強制執行認諾約款付公正証書を作成する場合に必要な費用は次の通りです。強制執行の対象となる慰謝料の金額によって必要な手数料が変わってきます。
慰謝料の金額 | 公正証書作成手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超、200万円以下 | 7,000円 |
200万円超、500万円以下 | 11,000円 |
500万円超、1,000万円以下 | 17,000円 |
強制執行の申立に必要な費用
強制執行の申立に必要な費用は、裁判所へ支払う申立手数料4,000円(収入印紙)と裁判所から相手に対して書類を送るための費用として予納郵便切手が約3,300円分必要になります。
強制執行を弁護士に依頼する場合の費用
強制執行の手続きを弁護士に依頼する場合は、弁護士費用が必要になります。弁護士費用は、依頼する弁護士によって金額が異なります。正確な金額は依頼する弁護士事務所で確認する必要がありますが、一般的な相場としては、慰謝料の金額が300万円以下の場合、着手金が4~8%、報酬金が4%~16%程度です。金額に換算すると、着手金が12万円~24万円、報酬金が12万円~48万円となります。
弁護士費用はあくまでも一般的な相場の金額なので、弁護士を依頼する場合は事前に金額を確認するようにしてください。
慰謝料を強制執行するには債務名義が必要
慰謝料の強制執行手続きを行うためには債務名義が必要です。債務名義とは、強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在,範囲,債権者,債務者を表示した公の文書のことをいいます。具体的には公正証書で作成された慰謝料に関する書類や和解調書などが必要になるということです。
強制執行は最終手段だと考えておく
今までご紹介したように強制執行を行うためには、多くの法律的な知識や手続きが必要です。そのため、強制執行の手続きをひとりで行うのは非常に困難だといえます。慰謝料を払わない人に対しては、強制執行という最終手段に踏み切る前に、まずは弁護士などの専門家に相談してみましょう。
最後に
慰謝料の強制執行手続きは、それほど珍しいことではありません。なぜなら、慰謝料を払わない人は一定数存在するからです。慰謝料を払ってもらえない、途中で支払いが滞ってしまったという場合は、ひとりで悩まずに法律に詳しい専門家に相談してみましょう。
一般社団法人あゆむでは、離婚や慰謝料にまつわるご相談に無料で対応しております。ご相談はお電話でもメールでも可能です。慰謝料を払わない相手にお悩みの場合や強制執行の手続きを検討している場合は、どうぞお気軽にご相談ください。