慰謝料の時効には、慰謝料の請求に関する時効と、慰謝料の回収に関する時効があります。請求した慰謝料が支払われないまま時効を迎えてしまった場合、その慰謝料は諦めるしかないとお考えの方も多いようです。ですが、時効がきてしまう前に時効の中断などの対策をしておくと、時効までの期間を延ばすことが可能です。ここでは、慰謝料の時効や時効の中断についてわかりやすく解説します。
慰謝料の時効とは?
慰謝料の時効とは、浮気、不倫、DV、婚約破棄などによって精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料(損害賠償)請求ができなくなること、または、すでに慰謝料の請求が成立したにも関わらず、支払いがされない状態になっているときに未払い分の請求ができなくなることをいいます。
慰謝料は、民法で定められた期間を経過してしまうと請求することができなくなります。また、慰謝料が未払いになっていた場合も、民法で定められた期間を経過してしまうと相手に支払いを求めることができなくなります。
慰謝料の時効ケース別一覧(浮気・離婚・DV・婚約破棄など)
浮気、不倫、不貞行為、DV、中絶、婚約破棄に対しての慰謝料の時効は次のとおりです。
原因 | 慰謝料請求の時効 |
---|---|
浮気/不倫 不貞行為 |
不倫事実や不倫相手を知った時点から3年 または不倫行為が行われてから20年 |
離婚 | 離婚したときから3年 |
DV | DVにより損害を受けたとき、加害者を知ったときから3年 (ただし、DVにより離婚した場合、離婚後3年以内であれば、損害を受けてから3年以上経過していても慰謝料を請求することができる) |
中絶 | 損害及び加害者を知ったときから3年 |
婚約破棄 | 婚約が解消した時点から10年 不法行為として構成した場合は婚約破棄から3年 (不法行為とは相手の両親に影で悪口を言われ、婚約を妨害されたことにより婚約破棄に至ってしまったケースなどのことをいいます) |
債務不履行 (慰謝料が支払われない) |
契約義務が果たされないことにより損害を被ったことを理由に慰謝料請求する場合の時効は10年 |
時効を考えるときの重要なポイントは、起算日です。つまり、どこを起点にして期間を数え始めるかということです。例えば浮気、不倫などの不貞行為の場合は、不倫の事実や不倫相手のことを知った日から時効までのカウントが始まります。
慰謝料を請求する際は、起算日がいつなのかを把握し、時効を迎える前に行動を起こすようにしましょう。
時効がきたら未払の慰謝料は諦めるしかない?
何もせずに時効が成立してしまった場合、慰謝料の請求は難しくなります。ただし、時効には除斥期間(じょせききかん)といって、時効までの日数にカウントされない期間があります。時効が成立前に除斥期間が認められる行動を起こすことで、時効日を遅らせることができます。
慰謝料の時効中断
慰謝料請求に限らず刑事事件にも時効がありますよね。刑事事件の場合、時効を迎えたあとに事件の犯人がわかったとしても、犯人は時効を迎えた事件について逮捕されることも罰せられることもありません。時効は、それだけ強い効力があるということです。
ただし、離婚の慰謝料や慰謝料支払いなどの債務不履行の場合、時効の中断が認められる行為があります。時効の中断に該当する期間があった場合は、時効の成立日を延ばすことができます。
慰謝料の時効中断が認められる行為は次のとおりです。
- 調停や裁判、支払督促など、裁判所を通じた慰謝料請求を行う
- 相手に債務を承認させる(慰謝料の支払いに同意させる)
- 差し押さえの手続き
裁判所を通じて慰謝料の請求や支払い督促を行うことで、時効は中断できます。慰謝料の支払いに対して相手の同意を得る(債務を承認させる)いった行動や、差し押さえの手続きを行うことで時効を中断し、時効期間を延長することが可能です。
時効間際になっている場合は、出来るだけ早くこれらの行動を起こす必要があります。
時効が成立している浮気や不倫の慰謝料を請求する場合
浮気や不倫に対する慰謝料は、不倫の事実や相手を知ってから3年、不倫が行われてから20年で時効が成立します。ただし、不倫の事実を知ってから3年以上経過していたとしても、離婚が成立してから3年以上経過していなければ、3年以上前の浮気や不倫の対しての慰謝料を請求することができます。
時効を過ぎてしまったら慰謝料を請求することができない?
未払いになっている慰謝料は、時効が成立しても「消滅時効の援用」を利用することで請求できる可能性があります。
慰謝料請求の消滅時効、消滅時効の援用とは
ここからは、慰謝料請求の消滅時効と消滅時効の援用について詳しくご紹介します。
慰謝料請求の消滅時効とは、長期間慰謝料の請求を行わず放置してしまい、慰謝料の請求権が時効によって消滅してしまうことをいいます。
消滅時効の援用は、慰謝料請求が時効を迎えたときに、慰謝料を請求された人が慰謝料を請求した相手に対して、時効になったので慰謝料を支払わないという意思を伝えることをいいます。相手に伝える方法は、口頭で伝えてもかまいませんが、証拠を残すために内容証明を使って伝えるのが一般的です。
慰謝料時効を成立させるためには、請求された側が消滅時効の援用をしなければいけないという決まりがあります。つまり、時効を迎えていたとしても、相手が消滅時効の援用をしていなければ、慰謝料を請求できる可能性があるということです。
逆に慰謝料を請求されている側は、時効になっていたとしても消滅時効の援用を行わなければ、慰謝料を請求されてしまう可能性があります。また、慰謝料を請求されている側の場合、確実に時効を迎えていることを確認してから消滅時効の援用を行わなければ、「寝た子を起こす」ことになり、時効が延長されてしまう可能性があります。
最後に
慰謝料の時効についてご説明してきました。慰謝料の請求や慰謝料の未払い請求には時効があります。ただし、時効は時効をカウントする起算日や時効の中断などによって認識が変わる可能性があるため、自分の判断だけで時効の日を判断するのはなかなか難しいといえます。慰謝料請求や慰謝料請求の消滅時効についてのお悩みは、ひとりで悩まずにわたしたちに聴かせてください。
慰謝料請求や慰謝料請求の消滅時効についてのお悩みがある方は、お気軽にこちらからお問い合わせください。
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