慰謝料とは、精神的な苦痛を感じた人が苦痛を与えた相手に対して賠償金を請求するものです。しかし、請求された慰謝料は必ず払わなければいけないものなのでしょうか。そこで今回は、慰謝料は必ず払わなければいけないのか、慰謝料を払わないとどうなるのか、慰謝料を払わない相手に払わせる方法など、慰謝料に関する疑問について解説します。
慰謝料は払わないといけないもの?
慰謝料の支払いについて、「慰謝料を請求されたら必ず払わないといけないの?」という疑問を持ったことはありませんか。慰謝料の支払いについては、必ず払わないといけない場合と払わなくてもいい場合があります。
慰謝料を払わないといけない場合
慰謝料とは、自分の行為や言動が原因で相手に精神的苦痛を与えてしまった場合に、その賠償として支払うものです。つまり、自分に原因があり、相手に苦痛を与えてしまった事実が明確である場合、相手から慰謝料を請求されたら、慰謝料は必ず払わないといけません。慰謝料請求が認められる事案としては、次のようなものがあります。
- 浮気・不倫などの不貞行為
- DV、モラルハラスメント
- 多額の借金、働かないなどの経済的な苦痛を与えた場合
これらが事実であり、相手に精神的な苦痛を与えてしまった場合には、慰謝料を支払う責任があります。
慰謝料を払わなくてもいい場合
慰謝料を払わなくていい場合は、相手が主張している内容が事実ではないときや、浮気相手や不倫相手と肉体関係がないときなどです。法律上、浮気や不倫と認められるのは肉体関係がある場合です。ただし、デートやキスなどを頻繁に繰り返し、婚姻生活が破綻した場合は、相手の請求が認められるケースもあります。
離婚調停で決定した慰謝料を払わないとどうなる?
決定した慰謝料を払わなかった場合どうなるのでしょうか。相手の対応によって異なりますが、「強制執行による給与や預金の差し押さえ」や「慰謝料請求訴訟(裁判)」に発展する可能性があります。
強制執行による差し押さえとは
慰謝料請求した相手が「強制執行」の手続きを行った場合、給与や預金が差し押さえられてしまうことがあります。差し押さえとは、慰謝料を支払わない相手の財産を強制的に差し押さえて回収するという方法です。ただし、強制執行の手続きを行うためには、公証役場で「公正証書」を作成しているか、家庭裁判所で調停を行い「調停調書」を作成している、または裁判による判決書がなければ強制執行の手続きを行うことができません。
慰謝料請求訴訟とは
慰謝料を請求されたけど無視した、または慰謝料を払わないといけない状況にもかかわらず、払わないという回答をしてしまった場合、慰謝料請求訴訟(いしゃりょうせいきゅうそしょう)といって、慰謝料の請求者に裁判を起こされてしまう可能性があります。慰謝料請求訴訟により、慰謝料請求命令の判決が出た場合は、判決に従って慰謝料を速やかに払わなければいけません。裁判所の判決に背いて慰謝料を払わなかった場合はどうなるかというと、強制執行が実行され、給与や預金が差し押さえられることになるでしょう。
慰謝料を払わない場合、親に請求される?
慰謝料は、精神的苦痛を与えた本人に対して請求するものなので、親に請求する権利はありません。そのため、慰謝料の請求に応じなかったとしても、代わりに親が慰謝料の請求を受けてしまうことはありません。
仮に請求する相手が未成年だったとしても、親が精神的な苦痛を与えたわけではないので親に直接慰謝料を請求することはできません。ただし、示談が成立した場合、支払能力がない子どもに代わって支払いをする約束をしていた場合は、親に請求することが可能です。
また、本人に支払い能力がない場合、親が一時的に慰謝料を立て替えて払うことは問題ありません。
離婚の慰謝料を払わない方法・払わせる方法
慰謝料を請求されたけれど、どうしても納得がいかないという場合、慰謝料を払わない方法はあるのでしょうか?また慰謝料を請求して払わないと言われた場合、払わせる方法はあるのでしょうか。
離婚の慰謝料を払わない方法
精神的な苦痛を与えたとされる原因の状況によっては、慰謝料を支払わなくてもよいケースがあります。
- 不倫をする前から夫婦関係が破綻していた
- キスやデートをしていた事実はあるが、肉体関係はなかった
- 相手が浮気や不倫をしていると主張しているが、内容が事実と異なっている
- 離婚成立後に、婚姻期間中の不倫に気が付いて請求してきた場合
これらの内容に該当する場合は、払う義務がないと主張することで慰謝料を払わないで済む可能性が高いといえます。また、慰謝料を請求した側も不倫をしていた場合、慰謝料の支払い義務が相殺されることで、払わなくて済む可能性もあります。
離婚の慰謝料を払わせる方法
反対に慰謝料を請求したにも関わらず支払いを拒否された場合は、次の方法で、慰謝料を払うよう相手に交渉してみましょう。
- 請求額の減額
- 分割による支払いを認める
- 強制執行の手続きをする(差し押さえ)
- 慰謝料請求訴訟をおこす(裁判)
請求した相手にそもそも慰謝料を払う能力がなかった場合、慰謝料の支払いを拒否されてしまうことがあります。このような場合は、請求額を減額したり、分割による支払いを認めることで慰謝料を払わせることができる可能性があります。それでも支払いに応じない場合は、強制執行の手続きをとったり、慰謝料請求訴訟をおこすことで給与や預金を差し押さえ、強制的に支払わせることも可能です。
最後に
慰謝料は払わないといけないものなのか、慰謝料を払わないとどうなるのか、慰謝料を払わせる方法などについてご説明しておきました。突然、相手から慰謝料を請求されてしまった場合、どのような対応をしたらいいか悩んでしまう人も多いでしょう。慰謝料を請求されて不安になってしまった場合、ひとりで悩まずにわたしたちに聴かせてください。
慰謝料請求に関するお悩みは、お気軽にこちらからご相談ください。
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