その人の生活をもう一度立て直すために、債務者を救済する方法として「自己破産」があります。自己破産とは、任意整理などの債務整理方法とは違い、原則これまでの借金が全て免除されるというものです。そのため、自己破産をした離婚相手には慰謝料や養育費が請求できないの?という疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。今回は、自己破産をした離婚相手にも慰謝料請求できるのか、相手の経済的事情から慰謝料・養育費が払えないという場合はどのようにしたらよいのかについて解説します。
自己破産とは?
自己破産とは、債務者を救済する方法の1つです。裁判所に「破産申立書」を提出し、免責許可がおりると基本的にはすべての借金をゼロにすることができます。慰謝料や養育費も支払う側にとっては借金の1つですので、「自己破産した人は慰謝料や養育費も支払う義務がなくなるの?」という疑問を持つ人もいるかもしれません。
ですが、「非免責債権(ひめんせきさいけん)」といって、自己破産をしても免除されない債権(借金)もあるのです。
離婚の慰謝料は自己破産した相手にも請求できる?
自己破産は、基本的にすべての借金はゼロにすることができます。しかし、先ほどご説明したとおり、自己破産をしても免除されない債権がいくつかあります。
自己破産をしても免除されない債権とは、具体的にどのようなものなのか、もう少し詳しく説明していきましょう。
自己破産しても免責されない非免責債権とは
非免責債権とは、その返済を免除してもらうことができない債権のことをいいます。つまり、自己破産をしたとしても、支払いを続けていかなければいけないお金だということです。
自己破産の非免責債権には、具体的に次のようなものがあります。
- 租税等の請求権
- 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求
- 生活費などの夫婦間の相互協力扶助義務に基づく請求権
- 夫婦間の婚姻費用分担義務に基づく請求権
- 養育費などの子の監護義務に基づく請求権
- 親族間の扶養義務に基づく請求権
- 従業員などの給与の雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
言葉だけを見ると、少々難しいような気がしてしまいますが、「税金」、「破産者が故意、過失、悪意によって相手に損害を与えたときの損害賠償金」、「夫婦や親族などと取り決めを行った生活費」、「養育費」、「従業員の未払い分の給与」と言い換えるとわかりやすいのではないでしょうか。自己破産をしてもこれらの支払いは免除されません。
自己破産しても免責されない悪意で加えた不法行為とは
「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」とは、どのようなことなのかもう少しわかりやすく解説します。
法律的な「悪意」とは悪気があったという意味だけではありません。悪いことだと認識して相手に損害を与えた場合も、悪意と捉えられます。つまり、気持ち的に悪意がなかったとしても悪いことだと認識して相手に損害を与えた場合は「悪意」と捉えられる可能性が高くなります。
自己破産によって慰謝料が免責されるケースも
相手の不倫や浮気による精神的苦痛に対して慰謝料を請求した場合、こちらは残念ながら「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」とは認められない場合が多く、慰謝料の支払いが免責されてしまう可能性が高いという現実があります。
何年にもわたり不倫関係や不貞行為を繰り返していたという場合、もちろんかなり悪質な状況ではあるのですが、積極的に妻に害を与えようとしていたとは認められないという判決が下されるケースが多いのです。
たとえば、身体的に不自由な妻に対して、生きることを困難にする目的で生活費を一切渡さない、サポートサービスなどをすべて停止し、自分も家を出るといった行為が認められた場合は「悪意で加えた不法行為」に該当する可能性が高いです。
しかし、一般的な不倫や浮気の場合、相手が自己破産をしてしまうと慰謝料の支払いも免責されてしまう可能性が高くなります。
自己破産後の慰謝料・養育費はどうなる?払えない場合は?
慰謝料請求された側が自己破産をしたとしても、慰謝料・養育費が非免責債権に該当する場合は支払いを免除されることはありません。ただし、支払わなければいけない義務はあったとしても、本人に支払い能力がなければ払い続けてもらうことはかなり厳しいと言わざるを得ません。
仮に高額の養育費を請求したとしても、本人に支払う能力がなければ払われることはありませんよね。まずは、払ってもらえる環境を整えることを第一に考え、払える金額に減額するなど話し合うことが大切です。
自己破産を理由に離婚したら慰謝料はもらえない?
配偶者の借金や自己破産を理由に離婚をした場合、基本的には慰謝料を請求することができません。
ただし、借金の返済やギャンブルにつぎ込むために生活費を持ち出してしまい家族が生活に困窮している、どんなに制止しても借金を繰り返すことから日常生活を送るのが困難になっているといった場合は、慰謝料を請求できるケースもあります。
ただし、本人が借金をして自己破産をしている状態なので、仮に慰謝料請求ができたとしても必ず払われるということではありません。
最後に
自己破産は、多重債務などにより生活が困難になった人を救済するシステムですが、自己破産をした人に慰謝料や養育費の請求をした場合、払ってもらえるのか不安になる人も多いでしょう。基本的に養育費は自己破産したとしても非免責債権になるので支払いを拒むことはできませんが、本人に支払い能力がなければ払われない可能性が高いと言わざるを得ません。
自己破産をした相手から慰謝料や養育費が払われない、そんな状況でお困りの方は、ひとりで悩まずにわたしたちに聴かせてください。
慰謝料や養育費のことでお困りの方はこちらからお気軽にご相談ください。
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