慰謝料を請求するときは、できるだけ一括で支払ってほしいと思うものです。逆に高額な慰謝料請求をされたときなど、一括で払えない場合もあるはずです。慰謝料は原則一括で支払うものですが、場合によっては分割も可能です。今回は、慰謝料分割払いの注意点や一括で払わせるための交渉術について、慰謝料を請求する側とされた側双方に対して、自分の希望が通りやすくなる交渉術をご紹介します。
不倫の慰謝料は分割払い可能?
冒頭でご紹介したように、不倫の慰謝料請求があった場合、慰謝料は一括で支払うのが原則です。しかし、慰謝料を払う意思があったとしても、自分の経済状況によっては一括で払えない、支払いが困難ということもあります。そのような場合、慰謝料を請求する側の了解を得られれば、分割で支払うことも可能です。
慰謝料には精神的苦痛に対する謝罪の意味があります。慰謝料を請求する側としては、慰謝料が支払われなければ今後の生活が困難になるという場合もありますし、慰謝料を支払う側としても、高額な慰謝料を支払うことで、今後の生活に支障をきたしてしまうかもしれません。
できるだけ自分の希望通りになるように交渉することが大切です。
慰謝料分割払いのメリット・デメリット
慰謝料を分割払いにするメリット、デメリットはどんなことがあるのか、慰謝料を請求する側と慰謝料を請求される側の立場の違いからご説明します。
慰謝料請求する側のメリット・デメリット
慰謝料を請求する側の場合、分割払いにするメリットは、請求した相手が慰謝料を一括で支払う能力がなかったとしても、慰謝料を減額せずに支払ってもらえる可能性が高くなることです。一括で支払うことが厳しくても、分割にすることで相手が慰謝料を払いやすくすることができます。
慰謝料の分割払いに応じるデメリットは、まとまったお金を受け取ることができないことと、分割払いの途中で慰謝料の支払いがストップしてしまうリスクがあることです。
相手に支払い能力がない場合、請求した慰謝料を支払ってもらう方法として分割に応じることは有効な手段だと言えますが、入金が途中でストップしないよう対策を講じておくことが大切です。
また、分割払いに応じる場合、慰謝料の支払いが終了するまで、相手との縁が切れないことも大きなデメリットと言えるでしょう。
慰謝料請求される側のメリット・デメリット
慰謝料を請求される側にとって、分割払いの最大のメリットは、慰謝料の支払いに対する負担を減らすことができることです。慰謝料の金額が大きい場合はそれだけ負担が大きくなりますが、分割払いに応じてもらうことで1回に渡す金額を減らすことができるため、自分の生活への負担を減らすことができます。
デメリットは、慰謝料を請求する側のときと同様、慰謝料の支払いが終了するまで相手との関係が続いてしまうことです。また、支払いが滞ったり、遅れたりした場合は催促が続く可能性や、場合によっては強制執行の可能性もあります。
他にも一括払いの場合は、慰謝料の減額交渉の余地がありますが、分割払いの場合は、相手の要求額に応じなければいけなくなる可能性もあります。また、分割にすることで請求額が増額される可能性も高くなります。
慰謝料を分割する場合、1ヶ月あたりいくらが相場?
慰謝料を分割する場合、1ヶ月あたりの金額はいくらくらいが相場なのでしょうか。
慰謝料の金額は、慰謝料を支払う人の月収などによっても状況が変わるため、一概にいくらが妥当という金額を出すことはできません。しかし、分割に合意するケースの場合、一般的には1年以内にすべてを支払うという人が多いです。1年以内の支払いが厳しい場合、3年以内に支払いを終えるなど、期間を設定することで合意に至るケースが多いと言えます。
金額でいうと、分割払いの場合、1回に支払う慰謝料の金額は3~5万円が相場です。1回の支払い金額を減らすと支払い期間が長くなってしまうため、ボーナス払いを併用するケースもあります。支払期間は1~3年以内、長い場合でも5年以内ほどでしょう。
慰謝料を分割にする場合、慰謝料を請求する側の合意が必要になります。慰謝料を請求する側になった場合は、次の点を念頭に入れて、分割払いの条件を決めると良いでしょう。
- 慰謝料を分割に応じる条件として、一括払いにするときよりも金額を増額する
- 給料に対して一定の割合以上の金額を1回の金額にする
- 全額分割にするのではなく、一定の割合の金額を頭金として一括払いにする
(仮に本人に支払い能力がなかった場合、代理で親などに慰謝料を請求することはできませんが、親に借りて支払うことは問題ありません) - 慰謝料の支払い方法、支払条件に関して公正証書を作成しておく
(公正証書を作成しておくと、慰謝料の支払いが滞ってしまった場合、強制執行の手続きを取ることができます) - 離婚する場合は慰謝料の金額を減額し、財産分与として多く受け取ることもできる
慰謝料を分割ではなく一括で払わせるには?
慰謝料を請求する側の立場で考えると、途中で支払いが滞ってしまうリスクもあるため、できれば分割ではなく一括で払わせるよう交渉することが大事です。相手に支払い能力がない場合、分割ではなく一括で払わせるための交渉術としては、次のような方法が考えられます。
- 一括払いの慰謝料総額を分割払いよりも下げる
- 経済状況や財産調査による差し押さえ
- 分割払いの場合は連帯保証人を付ける
それぞれについて、もう少し詳しく解説します。
一括払いの慰謝料の総額を分割払いよりも下げる
慰謝料を一括払いで支払うことが難しい、一括払いでの支払いに合意してもらえない場合は、一括払いの金額を分割払いの金額よりも下げて相手に提示してみましょう。金額を下げることで一括払いに応じてもらえる可能性があります。
経済状況や財産調査による差し押さえ
慰謝料分割払いで合意した場合、途中から慰謝料が支払われなくなってしまうことがよくあります。このようなときは、家庭裁判所に「履行勧告」の申し出を行うと、裁判所から相手側に慰謝料支払いを勧告してもらうことができます。しかし、履行勧告はあくまでも支払うように促すだけなので、払う意思のない人にとっては効果がありません。
強制的に慰謝料の支払いを求める場合は、「強制執行」の手続きをすると、給料や預金を差し押さえ、強制的に慰謝料の支払いをしてもらうことができます。
ただし、強制執行の手続きを行うためには、お互いの合意だけではなく、慰謝料の支払い条件についての取り決めを公正証書として作成しておく必要があります。
分割払いの場合は連帯保証人をつける
慰謝料を分割払いにする場合に連帯保証人をつけておくと、相手から慰謝料の支払いが滞ったとしても、連帯保証人に請求することができます。慰謝料の支払いに連帯保証人を付ける場合、公正証書に連帯保証人を付けることと、連帯保証人も一緒に公証役場に出向いて手続きをする必要があります。
連帯保証人が遠方に住んでいる場合は、委任状があれば同行する必要はありませんが、委任状の準備など日数を要することがありますので、余裕を持って手続きのスケジュールを組むことをおすすめします。
最後に
慰謝料の分割払いについて解説してきました。慰謝料を請求する場合や、高額な慰謝料を請求されてしまった場合は、法律の専門家に相談しながら手続きを進めることがおすすめです。離婚や慰謝料に関する問題は、ひとりで悩まずにわたしたちに聴かせてください。
慰謝料の支払いや分割払いに関してお悩みがある場合は、お気軽にこちらからご相談ください。
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